フリーグリッディングで時間を節約
数値流体力学(CFD)のアルゴリズムでは、流量の平均値の保存先である、小さい体積の要素から成る格子を使用します。多くのプログラムでは、適切な格子を構築することは、時間と労力にかなりの投資が必要な、困難な作業です。
通常、ほとんどのプログラムでは、1つまたは複数のタイプの多面体要素を使用しますが、それらは互いに結合すると同時に、流れ領域の幾何形状に適合する必要があります。複雑な流れ領域の場合は、多くの場合、非構造格子や、規則的に結合された要素の個別のブロックを使用する必要があります。
自動格子生成機能を採用している場合であっても、ユーザは要素の数とタイプ、要素の結合状態、アスペクト比、その他の機能を制御するためのデータを提供する必要があります。一般的に、幾何形状に適合する格子を生成するには、かなりの時間と労力を要する可能性があります。
生成が難しいことに加えて、多面体要素で作られている格子には制限が存在する場合があります。要素の面がうまく調和する必要があり、要素が変形しすぎてはならないためです(急速に変化する横断面が流れ領域にある場合に問題になる可能性があります)。最も重要なことは、幾何形状に適合する格子は、幾何形状が変更されるたびに再生成しなければならないということです。
独立した格子生成
フリーグリッディングでは、幾何形状の構築と格子の生成の操作は、互いに独立しています。格子または幾何形状の変更は自由に行うことができ、もう一方を変更する必要はありません。
FLOW-3Dで使用されているフリーグリッディング法は、可変の間隔設定が少数のパラメータで制御されている、単純な長方形メッシュで構成されています。固体の幾何形状(プログラムのプリプロセッサでプリミティブから構築したか、CADプログラムからインポートしたもの)が、FAVORTM(Fractional Area Volume Obstacle Representation)法を使用して、格子に配置されます。FLOW-3Dに固有のこの手法では、要素の表面および体積の、障害物によってブロックされている部分が、計算され、保存されます。計算はすべてプリプロセッサによって行われるため、ユーザの介入は一切不要です。
独立した格子生成のメリット
格子と障害物の構築が分離されているため、フリーグリッディングでは、ユーザは格子を変更せずに幾何形状を修正できます。逆に、格子精細化やその他の変更も、幾何形状モデルに影響を及ぼすことなく行うことができます。このように自由であるということは、CADファイルによって表現されている複雑な幾何形状でも、ほんの数時間で格子生成を行い、解を得る準備ができるということです。局所的な格子の解像度を望ましいレベルにするために、何回か反復処理を行うこともできます。
フリーグリッディングの例
FLOW-3Dで使用されているフリーグリッディングの例を見れば、このアプローチがCFD解析にもたらすメリットが明らかになります。図1は、ダンベルの形状をしたキャビティへの流れを調査するために開発された、やや粗い格子を示しています。同じ幾何形状で格子を精細化したものが、図2に示されています。FAVORTMを使用すると、この変更は、縦横方向の指定されているセル数をユーザが変更したときに、プリプロセッサによって自動的に行われます。格子生成と幾何形状を分離することにより、メッシュを再作成することなく、幾何形状の変更が可能になります(図3を参照)。FAVORTMでは、変更がほんの数秒で行われるため、ユーザは格子への適合という複雑な作業から解放されます。