FLOW-3D European Users Conference 2012のご報告(2012年6月25~27日)
今年のヨーロッパユーザーズカンファレンスはドイツ、ミュンヘンで行われました。
当社フローサイエンスジャパンからは丸湾、馬場が参加しました。成田より直行便でおよそ12時間、到着は夕方でしたが昼間のように明るく、少し戸惑いました。空港からシャトルでミュンヘン中央駅近くのホテルNH Munchen Deutscher Kaiserへ。ミュンヘン中心街で色々行ってみたい!…と思いつつも身体がついていかず…。丸湾は機内で眠れなかったようで、兎に角もう眠いのでまた明日、ということで一日目は終了。私もビールだけは取りあえず頂いて終了。
翌日は日曜日。市内を散策しました。でも、なぜか飲食店以外、店が全て閉まっている!?人も昨日と比べてほとんどいない?!と思いながらぶらぶら散策。途中、なんだか急に人込みが…と人が集まる方へ向かうと、どうやらマラソン大会が開かれていたようでした。街が静かだったのはそのせいだったのでしょうか?ゴール周辺ではみんなビールをおいしそうに飲んでいました。でも、まだ朝なのですけどね…。ゴール前の建物はどこかで見たことあるような…きっと有名な所なのでしょう!(後から調べたら市庁舎でした…)途中至るところに由緒ありそうな建物がありましたが、写真だけ撮りつつ徒歩の限界に来たところで休憩。…のどかな一日でした。
翌日から早速カンファレンスです。同ホテルのカンファレンスルームにて開催されました。初日はFLOW SCIENCE社より新バージョンの紹介とヨーロッパユーザ様からのご発表です。
まずはミュンヘン工科大学からは水理実験と解析比較のご報告がありました。河床を想定した水路にゴルフボールを敷き詰め、乱流場での流速分布の評価を行っていました。石の転がりもゴルフボールで模擬し、それを解析で再現するというユニークなご報告でした。
ドイツ、Erlangen-Nuremberg大学からはソルト中子の強度評価にFLOW-3Dの新しい機能FSIモデルを適用したダイカストでの溶湯射出時の溶湯流れと構造連成解析のご報告でした。Roche社からは溶剤撹拌における相の分離とレオロジー特性の理解のためにFLOW-3Dを活用したご報告でした。溶剤の非ニュートン性を適切に入力すると、実験で見られる相の分離も解析で再現できるのが確認できました。
再び水理関係でスペイン、バレンシア工科大学より市街の下水路改修にあたっての解析及び水理実験のご報告がありました。跳水で大きく変化する自由界面の形状を解析、実験で比較されていました。続いてEDF社からは界面に生じる渦の機構を解析と水理実験から検証したご報告がありました。渦は日常でもお風呂の栓を抜くときにも見られますね。まさにあの現象です。解析では広い領域と、渦が形成される部位に高いメッシュ分解能が要求されるので難しい解析になります。
その他、最適化ソフトウェアのSIGMA社、ポスト処理プログラムのCEI社からご発表がありました。
カンファレンス2日目も引き続きユーザ様から多数のご発表がありました。ポーランド、Wroclaw大学からは発電所のタービン周辺の流動解析に関するご報告がありました。解析ではタービン近傍での圧力スパイクが確認され、重大な損傷を引き起こす可能性が示唆されました。
続いて同じく水理関係でミュンヘン工科大学からは魚道の流れ場から魚の挙動を解析するユニークなご報告がありました。魚はある流速に逆らう性質があり、それを利用して河川に魚道を設置し、魚の保護にあたっています。生態系保護にもこのような研究が重要な役割を担います。
ベルギー、Allard-Europe社からは鋳造解析でのご報告がありました。Allard-Europe社は大物の鋳物を扱っており、今回は36000kg程の浚渫ポンプの鋳込みに関する報告で、ゲート方案検討にFLOW-3D CASTをご活用されています。
ドイツ、RMD Consult社からは水力発電所における設計に関し、FLOW-3Dの活用事例のご報告がありました。取水口近傍での流速分布、とりわけ渦が生じないような設計が重要で、タービンの効率においても上流側の流れを制御することが重要になります。CFD技術が如何に有効に活用されているかのご説明がありました。
スペイン、EINAR社からはAzudaと呼ばれるユニークな水車に関するプロジェクトのご報告です。1900年頃に撮影されたこの水車の写真を頼りに、1/5スケールでモデルを再現し、水理実験、解析が行われました。この水車は水汲み用のバケツがついた羽根になっており、回転に合わせて汲み取った水も上部水路に運ぶという機構で、最適形状の検討にFLOW-3Dが適用されました。
イタリア、Della Calabria大学からはポテンシャル流れの理論とFLOW-3Dによる解析との比較検証のご報告です。自由界面を含む流れ場中に円筒を置き、そこに衝突する波の挙動を非粘性流体で解析されていました。理論解での検証は限られており、このような基礎研究で解析精度を確認することは非常に重要です。
チェコ、Poyry Environment社からはブルノ市における排水設備に関する適用事例のご報告です。雨水の保持タンク内の流動挙動の確認で、解析による設計支援と実験による検証が行われておりました。ドイツ、Erlangen-Nuremberg大学からはロールコーティング解析に関するご報告でした。今回のユーザ様のご発表は水理関係が多かったのですが、ヨーロッパではコーティングのような微小スケールの解析にもよくFLOW-3Dが適用されているようです。コーティングは表面張力が卓越した解析ではありますが、ご報告ではごく僅かに重力の影響が確認されていました。各ロールに塗布される液の膜厚の比など、非常に有用な情報が得られました。
最後のご発表はWuppertal大学から2Dダム崩壊に関する研究です。本テーマの研究は実験、数値解析などより多数のご報告がありますが、自由界面の崩壊の様子をハイスピードカメラとPIVによる流速評価を行い、解析との比較検証をしておりました。シンプルな条件ですが、界面が崩壊する非定常の様子を正確に捉えることは解析で非常に重要なことで、ご報告ではFLOW-3Dの自由界面の挙動が実験と非常に良く一致しておりました。
今回もユーザ様からのご発表が多く、その内容も多岐の分野に渡り、また多数の実験結果を確認することができ、非常に参考になりました。
さて、3日目、最終日はFLOW-3Dのアドバンストトレーニングです。今回、ドイツ開催ということで、FLOW SCIENCE Deutschland社より鋳造のトレーニングがありました。ドイツ国内ではやはり自動車業界からの引き合いが多いようで、鋳造の解析技術が非常に高度です。Ver.10に加わった新機能FSI(構造連成)、TSE(熱応力)や中子砂の吹き込みモデル、鋳鉄の凝固モデルについて詳しい説明がありました。
海外の企業、大学でも日本と同じような問題に取り組まれており、今回のヨーロッパカンファレンスでも非常に有益な情報が得られました。今後もFLOW-3Dをご利用頂く国内のユーザ様に解析に関する的確なアドバイスができるよう努めたいと思います。