FLOW-3D European Users Conference 2017のご報告(2017年6月5日~7日)
2017年6月5日から7日まで、スペインのバルセロナにてThe 17th FLOW-3D Europian Users Conference 2017が開催されました。弊社からは丸湾、馬場、窪田が出席いたしました。ヨーロッパ各国からユーザ様がご出席・ご発表をして下さり、カンファレンスは盛況のうちに終了いたしました。
6月3日成田空港からヨーロッパに向けて出発いたしました。成田空港からローマを経由し、バルセロナまで向かう長旅です。
フライトは快調で予定通りバルセロナに到着し、タクシーでカンファレンス会場および宿泊先であるHotel Avenida Palaceへ向かいます。なかなかの長旅で到着するころには、深夜0時を回っていました。Hotel Avenida Palace はバルセロナの中心であるカタルーニャ広場の近くに位置するホテルで、かつてビートルズが宿泊したことでも知られているそうです。写真は、カタルーニャ広場です。
バルセロナの中心地の広さはそれほど大きくはなく1日歩き回れば、主要な観光地をおおよそ回ることができます。バルセロナの町並みはとても美しく、何気ない建物の中にガウディの作品が多くあり、街自体が一つの芸術作品であるかのような趣を感じます。
到着の翌日私たちは、バルセロナを観光しました。この日は、大雨の時間もありましたが、時間にして12時間、距離にして30 kmほど歩き、バルセロナの中心地を一周しました。写真は、バルセロナの代表的な観光スポットであるサクラダファミリアとカンプノウスタジアムの様子です。
6月5日(月) 半日トレーニング
この日は、米国Flow Science社(以下、FSI社)のIoannis Karampelas氏による数値解法についての講習を受けました。講習の内容はおもに陰解法/陽解法の選択、時間ステップ、圧力反復、1次精度/2次精度の選択など、解析を効率的かつ高精度で行うための方法についてでした。
6月6日(火) ユーザーズカンファレンス1日目
まずは、FSI社のThomas Jensen社長からEUC2017の開会の挨拶があり、2日間のカンファレンスが始まりました。今回は2日間で発表数は18件になります。
FSI社のMichael Barkhudarov副社長からは、FLOW-3D Ver 11.3およびFLOW-3D CAST Ver.4.3のリリースに関して発表がありました。FLOW-3D Ver 11.3/ FLOW-3D CAST Ver.4.3では、主に鋳造関連の機能が追加され、ダイカスト鋳造中のガス圧の評価や、スプレー冷却での熱伝達の評価が可能になります。そのほかにも、2流体計算での温度評価、浅水モデル、インタフェイスに関しても機能が追加されるようです。
最初のご発表は、XC Engineering社(イタリア代理店)のRaul Pirovano氏からです。FLOW-3Dをカスタマイズし、これまで考慮することのできなかったsolid間の輻射の影響が考慮されておりました。また形状の影となる部分の識別を行うなど、手の込んだカスタマイズがなされているようでした。
2番目のプレゼンターは、Flow Science Deutschland(ドイツ) のMatthias Todte氏です。テーマはSimulation of core making processで、鋳造における中子作成工程における重要な2つの工程、中子の打ち込み工程と、硬化工程に対して計算が行われたご発表がありました。
続くご発表は、Protesa社(イタリア)のRoberto Sapnelli氏から行われました。テーマはPorosity validation iron cast iron component produced by lost foam casting で、ロストフォーム鋳造で発生するポロシティを数値計算によって評価し、いくつかの計算条件の設定と計算結果の比較から、ポロシティの発生位置の関係について評価されていました。
Nemak Monterrey社(メキシコ)のFatima Mendez Medina氏は、Effect of temperature distribution during the filling of an aluminum high pressure die castingのテーマでご発表され、高圧ダイカストの解析から、仕上がりの温度分布、ゲートの評価などが行われた事例をご紹介されていました。
Airbus Safran Launcher社(フランス)のFracesco De Rose 氏からModelling of upper stage dynamics including fuel sloshingに関する発表がありました。燃料が激しくスロッシングされる問題を対象とした事例をご紹介されていました。
Fulvio Damiano and Pino Gillbert社(イタリア)のFracesco Fotunato氏は、Simulation of sloshing inside an automotive fuel tankのテーマでご発表されました。自動車の燃料タンク内の燃料のスロッシング問題で、実験結果と解析結果で良好な一致が見られたようです。
Roche Diagnostics社(ドイツ)のJulien Boeuf氏は、CFD modelling of droplet formation in microarraysのテーマでご発表されました。
カンタブリア大学(スペイン)のJenifer Gomez-Pastora氏からは、Optimization of magnetic blood cleansing micro deviceのテーマでご発表がありました。血液中に磁性体ビーズをいれ、磁場によって任意の方向へ輸送する過程の中で流体の計算でFLOW-3Dを使用しているそうです。
カンファレンス初日の最後の登壇は、Friendship Systems社(ドイツ)のStefan Harries氏による、Optimize your flow using FLOW-3D and CAESESのテーマでご発表があり、FLOW-3Dを用いたゲート方案などの最適化についてのご紹介でした。
6月7日(水) ユーザーズカンファレンス2日目
カンファレンス2日目は、まずJensen社長からFLOW-3D Ver 11.3/ FLOW-3D CAST Ver.4.3のインタフェイスについての話から始まりました。
Necmettin Erbakan大学(トルコ)のMuhammed Ucar氏より、CFD analysis of air-water flow structure in a circular drop shaftのテーマで水理に関連するご発表がありました。
Arcadis Netherlands(オランダ)のJoreon Adema氏より、Levelling system new shipping lock Ijmuiden ,the Netherlandのテーマで水理に関して、ご発表がありました。
フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(ドイツ)のZia .Jang氏からは、Numerical investigation on the influence of the surface tension and the contact angle on the film stability in reverse-roll processのテーマでご発表がありました。リバースロールコーティングと呼ばれる過程で薄いフィルムの挙動を確認するためにFLOW-3Dを使用して解析しているようでした。
弊社からは、丸湾が発表を行いました。多層の3Dプリンティング解析のほか、GPUを使用した、リアルタイムのDEM解析は多くの注目を集めました。
Aquatis社(チェコ)のTomas Studnicka氏は、Nove Herminovy Dam – hydraulic modellingのテーマでご発表されました。ダムの水害評価のためにFLOW-3Dを用いて解析を行なったそうです。
Mott MacDonald社(イギリス)のJohn Chesterton 氏からも水理関連のご発表をいただきました。貯水池の開放による水路の様子を解析で評価されていました。乱流を含む水面の挙動に焦点を当てていらっしゃいました。
アーヘン専門大学(ドイツ)のDaniel Valero氏からは、振動する流体で発生する乱流ついて、RANSの平均場近似と実際の挙動の差異についてFLOW-3Dを用いて評価されたご発表でした。
Institute FLUMEN(スペイン)のJackson Tellz氏からのご発表は、道にある鉄格子の効率に関して3Dモデルで解析を行なわれていました。
中東工科大学(トルコ)のMete Koken氏からは、”piano key”型の堰と階段状の水路の複合システムを実験と解析の双方から評価されたご発表でした。
全ての発表が終了し、最優秀発表が投票によって選ばれました。今回は、血液中の磁性体ビーズ挙動を解析した、University of CantabriaのJenifer Gomez-Pastora氏が受賞されました。
EUC2017が無事終了した翌日、各国のユーザ様や代理店の方々と挨拶を交わし、スペイン・バルセロナを後にして帰国の途につきました。バルセロナの人々、カンファレンスに参加いただいたユーザ様はみなとても親切で、充実した時間を過ごすことができました。今回、このような機会をいただき感謝しております。自身の至らない点を痛感する5日間にはなりましたが、これを糧にこれまで以上に会社に貢献したいと思います。
文責:技術部 窪田