FLOW-3DWorld Users Conference 2012のご報告(2012年9月12~14日)
今年のFLOW-3Dワールドユーザーカンファレンス(以下WUC2012)は、2012年9月12日~2012年9月14日、サンフランシスコで開催されました。
アジア(日本・中国・韓国・台湾・インド)、北米(アメリカ、カナダ)、ヨーロッパ(ドイツ・フィ ンランド、ポーランド)など世界各地域からユーザーならびにリセラーが参加し、次期バージョンの計画 やユーザー事例のプレゼンテーション、アドバンストセミナー、オープンフォーラムなど、FLOW-3Dの最も 新しい情報を高い密度で交換することが出来ました。
弊社からは、社長の丸湾、技術部の原田、営業部の村山の3人が参加いたしました。
開催地のサンフランシスコは、アメリカ西海岸のカリフォルニア州、サンフランシスコ半島に位置する港町です。1849年のゴールデンラッシュを機に急速に発展したそうです。市の顔となっている港やケーブルカー、チャイナタウン、チョコ レート工場などはその頃出来ています。ちなみにこの年に移住した人たちを49ersと呼び、アメリカンフットボールのチーム名にもなっています。現在の市は、一年中穏やかな気候に恵まれた観光地であるのと同時に、金融やIT産業が盛んな商業都市でもあります。
サンフランシスコ国際空港(SFO)に着いてすぐ感じたのが「涼しさ」。気温は20度前後しかなく、日によっては肌寒く感じる程でした。日差しが出ると、湿気が少ないこともあって風がとても気持ちよかったです。
WUC2012の会場はHyatt at Fisherman’s Wharf。サンフランシスコの観光地であるフィッシャーマンズワーフにほど近い、清潔で親しみやすい雰囲気のホテルでした。
フィッシャーマンズワーフはサンフランシスコを代表する観光地です。もともとは漁師の港だったようですが、今ではお土産屋やレストラン、子供向けの小さな遊園地などが並んでおり、大道芸人やストリートミュージシャンも多くて、週末はたくさんの人で賑わっていました。名物のシーフードやクラムチャウダーをいただきましたが、とても美味しかったです。
港町なのに風向きのおかげか不思議とあまり潮の匂いがしませんでした。街の清掃も行き届いており、どの建物も おしゃれで、美しい街でした。とにかく急な坂が多かったのですが、観光地/坂/港町ということで、個人的に小樽を思い出しました。
有名なゴールデンゲートブリッジやアルカトラズ島も近くて、ケーブルカーや路面電車の始発でもあり、観光船クルーズやセグウェイツアー、屋根なし観光バスなど、いくらでも観光できそうな楽しいところでした。
9月12日(水)トレーニング、ポスターセッション/レセプション
この日は一般コースと水理コースに分かれて、それぞれ、可視化トレーニングとアドバンストトレーニングを受講しました。可視化トレーニングでは将来的にFLOW-3Dに組み込まれる予定の汎用可視化ソフトウェアEnSightを実際に操作しながら、どういった可視化が可能かの説明を受けました。また、水理のアドバンストトレーニングでは、FLOW-3Dの簡単な説明に始まり、計算結果をどのように実測値に近づけていくかのTIPS、サイフォン式放水路の一通りのモデリング、造波、造波抵抗、浅水モデル、密度変化、相変化などについての考察等と盛りだくさんの講義を受けました。
夕刻からはポスターセッションとして、各リセラーが提供するポスターを見ながら、立食形式でのレセプションがありました。 弊社からは、三重大学の矢野教授と共同研究した鋳造の最適化についてのポスターを展示しました。
9月13日(木)ユーザーカンファレンス1日目
Flow Science社Jensen社長の挨拶でカンファレンスが幕開けしました。
Flow Science社のDitter氏から、次期バージョン10.1以降のGUIについて説明がありました。NavigationタブとSimulationタブの統合、Meshing/Geometoryタブでのツリー構成の見直しとカスタマイズ可能なウィンドウ化などが発表されました。まだ開発中のようですが、使いやすくなりそうです。
Flow Science社のBarkhudarov氏から10.1以降のソルバー機能についてロードマップが発表されました。FSI/TSEでのプラスチック変形、浅水モデルと3Dモデルのハイブリット、ポーラスメディアのGMO化、スプレー冷却、部分的な陰解法による移流計算などなど、多くの機能が追加される予定です。
Lexmark社のMulay氏からインクジェットプリンターのヒーター部品の長寿命化についての発表がありました。バブルジェットのバブルが最後に残る箇所に大きな圧力が発生するので、FLOW-3Dによる解析で箇所を想定することが、部品の長寿命化につながったそうです。
AECOM社のEdison氏から水道の接続水路の設計にFLOW-3Dを用いた事例が発表されました。
巨大な構造物ですので、これまで何度も必要だった設計変更がFLOW-3Dによる解析で必要なくなったと大変お喜びのご様子でした。
その他、インドの代理店から顧客であるAurangabad Electricals社の鋳造解析の事例や、シリコンメカニクス社からクラスターマシンの紹介がありました。
カンファレンス初日の夜は、フィッシャーマンズワーフのしゃれたシーフードレストランでディナーでした。鮭のムニエルとフィレステーキをいただきました。美味しかったのですが、最後のチョコレートケーキが濃厚で大きくて…、アメリカの豊かさを実感しました。
9月14日(金)ユーザーカンファレンス2日目
Albany Chicago LLC社のReikher氏から、ダイキャストにおける凝固パラメータについての研究が発表されました。
アイダホ州立大学のSavage先生からラビリンスウェアというジグザグの堰をFLOW-3Dで解析した事例の発表がありました。 複雑な形状かつかなり大きなモデルなので、どこまで簡素化できるか苦労されたそうです。
早稲田大学の清宮教授から、津波のいくつかの問題にFLOW-3Dを適用した事例を発表いただきました。
津波の実例として堰を超えて車や船が流れる様子をムービーで再生した際には周囲から驚きの声やため息が漏れました。
やはり注目度は高く、多くの質問が寄せられていました。
ヘルシンキのアールト大学(元ヘルシンキ工科大学)のVayrynen先生から鋳造事例の発表がありました。
ラドルの中で合金が溶ける事例を出来る限りシンプルなモデルで計算しようとされていました。
弊社代表の丸湾が、弊社で最近行っているカスタマイズや開発事例を発表しました。DEM(個別要素法)とのカップリングや、地形データのSTL変換、地形データから風の流れの計算例、一般移動障害物の回転運動の拡張(自転+公転)など、短い時間にこれでもかと 詰め込んだ発表で、会場も大いに盛り上がりました。
最後のユーザー事例はカリフォルニア大学のBombardelli先生による河川の洲の予測にFLOW-3Dを用いた事例でした。
その他、CEI社からEnSightのデモがありました。
カンファレンスの締めくくりとしてFlow Science社のDitter氏とBarkhudarov氏が質問に答え、活発な意見交換がなされました。
以上、FLOW-3Dにどっぷりと没入した3日間でした。来年の開催地はシカゴとの発表がありました。観光も含めて是非ご参加ください。
文責:営業部 村山