FLOW-3D What’s New Ver.12.0
FLOW-3D Ver.12.0は、シミュレーションの素早い設定、一般的なエラー回避と入力データミスの特定、そして解析シミュレーション結果の高速化と効率化を可能としています。このようにして、技術者のシミュレーションに対する作業手順の合理化を継続しています。以下では、FLOW-3D Ver.12.0 における新機能の一部を紹介します。
ソルバの新機能と改良
物理モデルと数値モデル
埋め込み境界法
力とエネルギ損失の正確な予測は、固体形状まわりの流れを含む多くの工学問題をモデル化する上で重要です。新版は、そのような問題に対して設計された埋め込み境界法(IBM)に基づいた新しいゴーストセルを特徴としています。IBMは、内部流れと外部流れに対する壁近傍のさらに正確な解を提供して抗力と揚力の計算を改善しています。
2流体モデルに対する2温度場
2流体熱伝達モデルは、それぞれの流体に対するエネルギ輸送方程式を別々に分ける拡張をしています。現在では、それぞれの流体自体の温度変数を持っており、界面近傍の熱伝達と質量交換の解の精度は改善されています。界面における熱伝達は、時間テーブルで記述可能なユーザ定義の熱伝導率で制御されています。
スラッジ沈降モデル
新しいSludge Settling(スラッジ沈降)モデルは、都市の公共設備問題に対する有益な追加機能であり、排水処理槽や浄化器内の固形排出物をモデル化できます。沈降速度は、分散相の液滴サイズの関数であるドリフトフラックスモデルとは異なり、スラッジ濃度の関数であり、関数とテーブル形式の両方で入力できます。
自由表面流れに対する定常状態アクセラレータ
名前が暗示しているように、Steady-state acceleratorは、定常解への漸近速度を高めます。これは、微小振幅重力波と毛細表面波を減衰させることで達成しており、自由表面流れに対してのみ適用可能です。
ボイド粒子
Void Particles(ボイド粒子)は、bubble and phase change(気泡および相変化)モデルに追加されました。ボイド粒子は、潰れて消失したボイド領域を表現し、流体に対する抗力および圧力として作用する小さい気泡として働きます。ボイド粒子のサイズは、周囲の流体圧に応じして変化し、シミュレーション終了時の最終的な位置は空気連行に対する可能性を示しています。
堆積・洗堀モデル
Sediment Scour and Deposition(堆積・洗堀)モデルは、精度及び安定性を強化するために大幅に改良されています。特に、堆積物の種に対する質量保存は大きく改善されました。
流出(Outflow)の圧力境界条件
現在では、Pressure Boundary Conditions(圧力境界条件)は、全ての流動量の圧力および流体率の反射をその境界から上流へ向う流れ条件から取り除くOutflow(流出)オプションを含んでいます。流出の圧力境界条件は、固定圧力境界と連続境界の複合的な境界条件です。このことは、Outflow Type of Pressure Boundary(圧力境界の流出タイプ)の中で詳述されいます。
粒子ソースの移動
現在では、Particle blocks and sources(粒子ブロックおよびソース)内の粒子ソースは、シミュレーション中に移動できます。時間依存の平行移動速度と回転速度はテーブル形式で定義します。粒子ソースの運動は、粒子湧き出し時に放出された粒子の初速度に追加されます。
可変重力中心
gravity and non-inertial reference frame(重力および非慣性基準座標系)モデル内で、外部ファイルのテーブルを用いて重力の中心位置を時間関数として定義できます。この機能は、例えば、ロケットが燃料消費中であったり、分離ステージであったりすることをモデル化するときに役立ちます。
空気連行モデル
最も単純な体積ベースのAir Entrainment(空気連行)モデルオプションは、既存の質量ベースモデルに置き換えられています。質量ベースモデルは、体積ベースモデルよりも物理学的に妥当であり、連行される空気質量は周囲の流体圧に応じて体積変化する間も保存されます。
トレーサの拡散
現在では、Flux surfaces(フラックスサーフェス)において生成されるトレーサは、例えば、実際の汚染物質の挙動を模擬できるように、分子拡散と乱流拡散過程による拡散を考慮できます。
モデル設定[Model Setup]
シミュレーションの単位
現在では、単位系は温度を含めて完全に定義する必要があり、標準単位系が提供されています。その上、ユーザはオプション選択から質量、時間、および長さに対する単位系を定義でき、カスタマイズ単位系や慣用的な単位系も設定できます。また、圧力の単位系に対しては、ゲージ圧か絶対圧のどちらであるのかを指定する必要があります。シミュレーションのデフォルト単位系は、Preferencesメニューにおいて設定できます。単位系の完全な定義は、FLOW-3D Ver.12.0が定義するデフォルト値の普遍定数だけでなく物理量に対しても可能にします。よって、ユーザに必要な作業量は最小化されます。
浅水流モデル
浅水流モデルにおけるManningの粗度
Manningの粗度係数はShallow Water Model(浅水流モデル)内の地形表面におけるせん断応力の評価に対して適用できます。これは、表面粗さの大きさに基づく既存の粗度モデルを補足し、併用できます。標準の粗度と同様に、Manningの係数はコンポーネント、サブコンポーネントの属性にでき、または地形ラスタデータセットからインポートできます。
メッシュ作成
垂直方向に対するMeshing設定は簡素化されており、ボトム境界とトップ境界の座標を設定するだけとなりました。
コンポーネントの変換
現在では、ユーザは複雑な幾何形状の集合体の設定手順を簡素化でき、複数のサブコンポーネントから成るコンポーネントに対して座標変換(平行移動、回転、および拡大縮小操作を適用できます。General Moving Objects(一般移動物体)のコンポーネントに対して、これらの座標変換は、コンポーネントの対称軸と位置合わせするために物体座標系へ適用できます。
実行時のスレッド数の変更
シミュレーション中にソルバで使用されるスレッド数を変更する機能がRuntime Optionsダイアログに追加されました。これにより、必要に応じてスレッドを追加する、あるいは別のタスクでリソースを必要とするときにスレッドを減らすことができます。
プローブ制御の熱ソース
Active Simulation Control(アクティブなシミュレーション制御)は、幾何形状コンポーネントに関連付けられる熱源にも適用できるように拡張されました。現在、熱の放出は時刻歴プローブで制御できます。
ソースの時間依存温度
現在、Mass Sources(質量ソース)およびMass-momentum sources(質量・運動量ソース)における流体温度は、時間依存テーブルの入力で定義できます。
輻射率の係数
ボイドへの輻射熱伝達に対する輻射率の係数は、これまで輻射率とStefan-Boltzmann定数の積を指定していたことに代わり、直接定義できます。現在、輻射率は座標系に基づいてソルバが自動的に設定します。
出力設定[Output]
現在では、ソルバオプションの一定流速場を使用した場合にSelected Dataへ流速が出力できます。
既存の壁付着力の出力に加えて、壁付着による幾何形状コンポーネントのトルクが、別個の量としてGeneral History Dataに出力されます。
乱流モデルの出力要求が指定されている場合、乱流エネルギおよび乱流散逸とともにせん断速度およびy+がSelected Dataへ自動的に出力されます。
幾つかの量が、Air Entrainment(空気連行)モデルの出力に追加されています。空気連行の詳細情報として、いつ、どこで連行や離脱が起きているかを知るための詳細情報を提供するために、自由表面を含んでいる全てのセルの連行空気および離脱空気の体積フラックスが、RestartおよびSelected dataに出力されています。全体の計算領域内(同様に、各サンプリングボリューム内)にある、これら2つの量の時間積分および空間積分の等価量がGeneral History dataに出力されています。
ソルバの出力結果ファイル(flsgrf)の最終的なファイルサイズが、シミュレーション終了時に報告されます。
現在では、2流体計算において既存の出力量である流体残留時間および流体移動距離は、第1流体と第2流体、およびそれらの混合流体に対して別々に計算されています。
Mass particles(質量粒子)に対して、従来の粒子種のカウントに対する出力を補足するために種毎の総体積と総質量が全体の計算領域、およびサンプリングボリュームとフラックスサーフェスに対して計算されており、それらはGeneral historyに出力されています。
ガス巻き込みの特定を支援するために、最終の局所ガス圧がOptional Output(オプション出力)の量として追加されました。例えば、これは燃料タンクのベントシステム設計を補助します。この出力量は、Adiabatic Bubbles(断熱気泡)モデルと一緒に使用され、流体で充填される前のセル内の最後のボイド圧を記録しています。
新しいカスタマイズ可能なソースルーチン
ユーザの開発環境内でアクセスできる、新しいユーザカスタマイズ可能なソースルーチンが追加されています。
ソースルーチン名 |
説明 |
cav_prod_cal |
キャビテーションの生成速度および消滅速度 |
sldg_uset |
スラッジ沈降速度 |
phchg_mass_flux |
蒸発および凝縮による質量フラックス |
flhtccl |
第1流体と第2流体間の熱伝達率 |
dsize_cal |
2相流における動的液滴サイズのモデルに対する合体速度と分裂速度 |
elstc_custom |
粘弾性流体に対する応力方程式のソース項 |
ユーザインタフェースの再設計
現代的なデザイン追求によって、FLOW-3D Ver.12.0のユーザインタフェースはユーザのワークフローを合理化するフラット構造にデザインチェンジしています。
設定のドックウィジェット
Physics、Fluids、およびFAVORを含むすべての設定オプションは、Model Setupを単一タブ内に集約するために、幾何形状ウィンドウ周辺のドックウィジェット内に移行されています。このモデルチェンジによって、これまでのバージョンで使用されていた、込み入った折り畳み式ツリー構造は見やすく効率的なメニュー表示に置き換えられ、モデル設定タブを長らく残しておくことなく簡便なアクセスを提供しています。
Setupの新しいアイコン
新しいModel Setupデザインには新たなアイコンが導入され、設定プロセスの各ステップを表しています。
Physicsの新しいアイコン
新しいPhysicsアイコンは、各モデルの目的と使用に則した明快なビジュアル表現を提供しながら、一見してお互いを容易に区別できるデザインとなっています。
RSSフィード
FLOW-3D Ver.12.0に対するSimulation Managerタブは、新しいRSSフィードで開始されるように改造されています。現在、ユーザはFLOW-3D Ver.12.0の開始に際して、最新ニュース、イベント、およびフローサイエンス社からのブログポストで迎えられます。
構成変更可能なシミュレーションモニタ
実行中のシミュレーションは、重要なタスクをモニタリングしています。
FLOW-3D Ver.12.0におけるSimulation Managerは、ユーザがシミュレーションをより良く監視することを支援するためのプロット機能を増加させています。ユーザは、シミュレーション実行時のグラフによって監視するために、全ての入手可能なGeneral history dataの変数から選択でき、各グラフへ複数の変数を追加できます。現在では、実行時に入手可能なGeneral history dataは以下を含んでいます。
流体温度の最小値/最大値
観測位置における温度
フラックスサーフェスの位置における流量
シミュレーションの診断(例:時間ステップ、安定制限)
コンフォーミングメッシュの可視化
現在では、新しいFAVORドックウィジェットを通して適合メッシュブロックを可視化できます。
大規模ラスタとSTLデータ
大規模Raster File(s)の幾何形状データを処理することは、データ処理に多くの時間を要するので、しばしば骨の折れる仕事になるかもしれません。大規模幾何形状データの処理中は、かなりの時間を要するかもしれません。ユーザが、それらのデータ処理中もインタフェースが途絶えることなく完全なレスポンスで作業を継続できるように、現在のFLOW-3D Ver.12.0では、これら大規模なデータセットはバックグラウンドのタスクとしてロードします。
FlowSight
スプラインクリップ
スプラインクリップは、2D断面部分を生成するために方向を指示してスプラインを“extruding”(押出す)ことで作成されます。
ビューの方向スケーリング
ビューポートのビューの方向に対する拡大縮小は、Views Managerダイアログ内で操作設定をします。
時刻歴データの注釈
History Data(時刻歴データ)は、テキスト、ダイヤル目盛、およびゲージ目盛の表示で追加できます。
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