格子システム
数値モデル化になじみがない人は、格子生成という処理には少し戸惑ったり、混乱してしまうかもしれません。ここでは、最も一般的なタイプの3次元格子について、それぞれの長所と短所を含めて説明します。

固定直交格子と固定非直交格子
コントロールボリュームの選択

均一長方形

可変長方形
コントロールボリュームの構造メッシュ作成
構造格子には、要素の形状によって、さまざまな種類があります。最もシンプルな格子は、長方形のボックスを、ボックスの面と並行な面を持つ一連の長方形要素に細分化することによって生成されます。多くの場合、要素の並び順は、x方向、y方向、z方向の順にカウントし、格子要素(I、J、K)がx方向のi番目の要素になるようにするなどして決められます。
規則的なブロック要素で構成されている格子は、最もシンプルな構造です。これは要素の表面を定義する表面のx、y、zの値に関して1次元の配列を3つ定義するだけでよいからです。I、J、Kが、x、y、z方向の最大のインデックスである場合、格子を定義するために必要な値の合計数はI+J+Kです。要素のサイズがゆっくりと変化する長方形格子も、規則性を示し、数値の精度の維持に役立ちます。
長方形要素の制限の1つは、幾何形状の表面が通常は要素全体をブロックに分割することによって近似されることです。これにより、境界が不連続の階段状になります。こうした階段状の部分によって流動損失が生じ、その他の望ましくない効果も発生します(「FAVORTMを使って損失ゼロ」を参照)。
障害物のある曲面をより正確に幾何形状的に表現する方法が2つあります。1つは、指定した幾何形状に合わせて格子要素を変形することです。この場合、要素は一般的な六面体の形状になり、多くの場合、格子は物体適合格子と呼ばれます。もう1つの技法は、長方形要素を保持しつつ、内部を切り取って障害物を定義する方法を補足することです。このタイプの技法は、FAVORTMと呼ばれ、FLOW-3Dプログラムで使用されています。FAVORTM法については、以下で詳細に説明します。
長方形メッシュと変形メッシュの比較

1. 3D配列が4つ必要(FAVORTM) 2. メッシュ生成が簡単 3. シンプルな数値アルゴリズム
これにより、大量の格納メモリが使用され、メモリの検索時間が長くなります。メモリのコストは下がってきていますが、検索対象のメモリの量は、並列計算では重要な問題となってきています。

1. 3D配列が10個以上必要 2. メッシュ生成が複雑 3. アルゴリズムがより複雑
歪みによるもう1つの影響は、数値近似がより複雑になることです。要素の各面で力やフラックスを法線成分や接線成分に変換しなければならないだけでなく、通常は、与えられた要素の近似に周囲のすべての要素(六面体の26個の面、辺、頂点の隣接要素)からのデータを含めることも必要です。純粋な長方形格子では、直接結合する必要があるのは、与えられた要素と共通する面を持つ6個の隣接要素のみです。
最後に、構造長方形格子を何らかの形状に変形することができない場合もあることに注意してください。たとえば、直線部分をL字型に変形しようとすると、内角で要素が破損または反転します。この制限を解決するには、複数の構造格子ブロックを結合してシンプルな非構造にするか、完全な非構造格子を使用します。
コントロールボリュームの非構造メッシュ作成

多面体要素
一般的なタイプの非構造格子は、四面体要素で構成されています。これらの格子は、六面体要素で構成されているものより簡単に生成できる傾向がありますが、数値的精度は通常は低くなります。たとえば、四面体格子要素には平行する面がないため、1次元の流れの擾乱の正確な伝搬を維持する近似を構築するのは困難です。
要するに、格子システムとして何がベストな選択かを決めるには、生成のしやすさ、メモリ要件、数値的精度、複雑な幾何形状に対応する柔軟性、局所的な解像度の高低に対応する柔軟性など、さまざまな要因があります。

メッシュの細分化とマルチブロック
幾何形状は、障害物でブロックされている各要素の表面積占有率と体積占有率を計算することによって、格子内で定義されます。このFAVORTM(Fractional Area Volume Obstacle Representation)法では、要素ごとに3つの面積占有率と1つの体積占有率を保存する必要があります。これは、物体適合格子に比べれば比較的少ない情報です。
FAVORTM法の背景にある原理は、各コントロールボリュームに関して、数値アルゴリズムは、1つの圧力、1つの速度、1つの温度などで構成される情報に基づくというものです。そのため、幾何形状を定義するために過剰な情報を使用するということは矛盾しています。したがって、FAVORTM法は、長方形要素のシンプルさを保持しつつ、各体積要素内で平均化された流量を使用することと矛盾しないレベルで複雑な幾何形状を表現します。
FAVORTM法を使用すると、格子と幾何形状を互いに独立して自由に定義できます。ここでは、これをフリーグリッディングと呼びます。フリーグリッディングのメリットは、ユーザ側が格子と幾何形状を非常に短時間で簡単に生成したり変更したりできるということです。格子と障害物の記述が交わる部分の計算作業はすべてコンピュータが行います。これこそが、自動コンピューティングというものです。