質量粒子による溶湯内の 気泡 追跡手法
背景
湯流れ時に巻き込まれる空気が製品内に残存するとポロシティ欠陥となる。現在、湯流れシミュレーションにより 気泡 を追跡し、欠陥の発生しにくい鋳造方案や製品形状の検討が進められている。 気泡 を含む混相流計算を簡単に扱うために、断熱的な圧縮膨張を仮定した状態方程式を適用し、ガス流動を無視して 気泡 圧力を考慮するモデル(断熱 気泡 モデル)を用いることが一般的である。しかし、溶湯圧によりセルサイズ以下に収縮した 気泡 の情報は失われるため、最終的な 気泡 位置の評価は十分ではなかった。本研究では、質量粒子を用いて消滅する 気泡 を追跡し、最終位置を評価する手法を開発した。これをFLOW-3Dに組み込み、高圧ダイカスト品に適用したので報告する。
解析方法
本手法は、 気泡 が溶湯圧によりセルサイズ以下に押し潰された時、質量粒子に置き換わるというものである。FLOW-3D内では各気泡の内部圧力と体積、中心座標を保存している。質量粒子の直径は 気泡 消滅時の体積を用いて計算され、密度は標準大気密度一定である。下図右側の粒子の色は、直径を表している。
解析条件
下図に湯流れシミュレーションを行った高圧ダイカスト品のモデル形状を示す。 気泡 の挙動には断熱気泡モデル及び開発した粒子モデルを適用した。流体はADC12、金型にはSKD61の物性値を設定し、溶湯を0.9m/sの射出速度で流入させた。
解析結果
下図(左)、(右)はそれぞれ最終充填時刻による分布を示しており、下図(左)は空気巻込み率、下図(右)は粒子分布を示している。ランナーから流入した溶湯は製品部のフィン形状により細かく飛び散り、多くの 気泡 を巻き込みながら充填される。充填完了後、粒子の分布に傾向が見られた。従来法では微小な 気泡 は潰れてしまうが、本手法では 気泡 が潰れた後も粒子の位置により 気泡 を追跡することができる。
まとめ
消滅する気泡を質量粒子に置き換え追跡する機能を開発し以下の知見を得た。 影響を明確にすることができた。
- 予測したポロシティ欠陥分布は実製品と近い結果を示し、本手法の妥当性を確認できた。
- メッシュを細分化せずに微小な気泡を追跡したため、計算時間を掛けずに効率よく解析を行えた。
- 本手法はダイカスト鋳造だけでなく樹脂成型など巻き込み気泡の位置が重要となるケースにおける有効なツールになる。
※資料提供 : JONSHIN MOLD INDUSTRIAL 様