海事のCFD適用事例
海洋船舶 分野における船体設計、船内の燃料タンクおよび貨物船倉を最適化すること、波の発生と海洋構造物への波浪衝撃を評価すること、そして換気力学を調査することは船舶技術者と造船技師にとって重要です。コンピュータシミュレーションにより高価な実験に頼ることなく、これらのプロセスを解析するための便利な方法を提供します。
船体設計と船舶の力学
船体周りの流れは設計者にとって重要な焦点です。船体を過ぎた流れについては、抵抗(抗力)、船尾境界層、流れ方向の渦、およびプロペラ平面の速度場を含めて多くの局面で調査する必要があります。また、船の設計者にとっての重大な関心事も船殻上に作用する全抵抗あるいは抗力にあります。これらの数値全てを予測するための有益なツールとして FLOW-3D を使用できます。
世界中で周航するアースレースを支援
FLOW-3Dは、船体と水面上の波とが完全連成する一般的な6自由度(6-DOF)の運動をシミュレートできるので、アースレースチームに採択されました。船体の運動は、段波、ヒープ、横揺れ、上下動、回転および偏揺れに対して剛体の対象物として取り扱われます。
アースレースのユニークな船体設計は、波を乗り越えるというよりも突き抜けることができます。この設計は海の状態がどれくらい荒れているかに関わらず、ボートは殆ど一定速度を維持できます。
海事の適用事例に対する流体構造連成
係留船舶、タグボート、および海洋プラットフォームのシミュレーション
FLOW-3Dバージョン9.4では、流体構造連成モデル(一般移動物体:GMO)に新しくバネおよびロープの機能を追加しました(市販のCFDソフトウェアでGMOを有しているのはFLOW-3Dだけです)。連成運動する物体は、他の運動物体や静止物体、あるいは空間中の任意固定点に対してバネおよびロープで係留することを取扱えるようになりました。伸張バネ、圧縮バネ、および捩りバネのような幾つかのタイプのバネをモデル化できます。
海洋工学において、浮遊式の生産、貯蔵および積出装置(FPSO)の安定性を検討することができます。また、浮遊式波力発電装置の運動、船舶や海洋計測装置の係留、あるいは船舶の曳航シミュレーションも実施できます。
以下に、どのような一般移動物体モデルの流体‐構造連成機能が、海事の設計プロジェクトに適用できるかの例があります。
紐とロープの機能を使用した係留船舶のシミュレーション
この流体構造連成のシミュレーションは、波浪状態での係留船舶の運動を表しています。6本の係船索の一方の端が甲板に固定されており、もう一方の端は海岸に固定されています。開境界で5次ストークス波が生成されて船舶の方へ伝播します。アニメーションは波により引き起こされた運動を表しており、係船索の張力と波止場の壁との衝突で拘束される船舶の運動を示しています。大綱 (ウィキペディアの定義を参照)のクローズアップ。6本のロープの配置 |
不安定 vs. 安定のモデル化
これらのシミュレーションは、FLOW-3Dの機能が船舶の浮心、重心、メタセンタ高さに関する水の運動を捉えて正確に連成していることを表しています。不安定な船舶は、設計が不安定な船舶となっていることを表現するため、特別に重心を変更しています。 |
船舶の横向き進水(衝突を伴う)
このシミュレーションは造船現場から戦艦が横向き進水することを表しています。造船台での船舶の滑りは一連の微小衝突として取扱われ、衝突モデルを用いてシミュレーションを行っています。船舶の浮遊は、水の運動との動的な連成を考慮して計算されています。
不均一密度分布を持つ船舶
新しくリリースする度にGMOモデルの適用拡張をしてきました。FLOW-3Dバージョン9.3では、異なる密度を持つコンポーネントの集合体が運動するモデル化機能を使用できます。この例では二つの材料(船首側は密度小;船尾側は密度大)から構成された船舶がモデル化されています。
スロッシング力学のモデル化
グローバルな遠洋航海の船舶における過酷なスロッシング運動の効果は、そのような船舶の安全性の設計において重要な要素です。船舶は、波動力学による著しい内部圧力を経験することがあります。タンク内の燃料または液体貨物の激しい運動は、格納系と支持構造物に過酷なスロッシング荷重をもたらす可能性があります。
FLOW-3Dの非慣性座標系モデルは、コンテナ内の流体運動を正確に追跡するために規定する複雑な運動パラメタを与えることができます。
船舶技術者にとって、船舶の外側で起こることだけが関心事という訳ではありません;船内コンパートメント(特に、熱の発生が性能および快適性の両方に影響を及ぼすエンジンルーム内)の換気を考慮する必要もあります。FLOW-3Dは、冷却システムの効率を向上させるために使用され、船内コンパートメントと船外環境との間で設定した温度差の維持はもちろん、最大の内部平均温度を維持するためにも使用されています。
波浪衝撃のシミュレーション
ランダムな暴風波にさらされる石油産出プラットフォームなどの海洋構造物における限界荷重の予測は重要です。また、甲板上の水と船首フレア部のスラミング、およびその結果として起こる応答につながる物理学的なメカニズムを解析する必要があります。FLOW-3Dシミュレーションは、デッキ上の水の伝播、結果としてもたらされる構造物上の衝撃荷重、および大規模な波動伝播と柱への衝撃の予測を提供します。
海洋構造物のエアギャップおよび波浪衝撃荷重を予測
海洋プラットフォームデッキの下の平水エアギャップは、極めて重要な設計パラメータであり、極端な設計条件で要求される最少エアギャップによって決定しています。海洋プラットフォーム、張力脚プラットフォームおよび半潜水艇における波浪衝撃荷重とエアギャップの予測をすることに、FLOW-3Dを効果的に使用できます。