ダイカスト 射出の水モデル観察と流動シミュレーションの比較
研究背景
ダイカスト 鋳造では溶湯を高速で金型に充填することに起因する空気の巻き込みや金型内空気の排出不良が問題となります。鋳造シミュレーションは設計段階における不良対策ツールとして活用され効果を上げています。一方、製造・機能要件に比例してシミュレーション結果への要求精度も年々高まりつつあります。
研究目的
流動シミュレーション予測精度の評価を目的として、水モデル実験によるスリーブおよびキャビティ内流動挙動の可視化結果とFLOW-3Dによる流動シミュレーション結果を比較しました。また、通常は無視されるキャビティ内ガス流動の影響を評価するため、圧縮性を考慮した気液2相流解析を行いました。
スリーブ内溶湯挙動の比較
最大射出速度に対する空気の巻き込み体積率の変化は良好に一致しました。 |
空気巻き込み量の少ない最適な最大射出速度に対し、速いケースではスリーブ上部のジェット、遅いケースではスリーブ端部からの還流を捕えています。 |
キャビティ内溶湯挙動の比較
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空気概ね再現していますが、断熱気泡モデルでは複雑な先端形状を再現できませんでした。 |
複雑な先端形状挙動や空気の巻き込みをより詳細に捕えられました。 |
まとめ
流動シミュレーション予測精度の評価を目的とて、 ダイカスト を模擬した水モデル観察との比較を行い以下の知見を得ました。
スリーブ内シミュレーション
- 流れパターン及び空気巻き込み量が観察と良好に一致
キャビティへの高速射出シミュレーション
- よく用いられる1流体断熱気泡モデルでは、流れパターンは一致
- キャビティ内ガス流動を考慮した圧縮性気液2相流計算では、複雑な先端形状挙動や空気の巻き込みをより詳細に捕えられた
※参考文献 : J.J.Hernández-Ortega,R.Zamora, ”An Experimental and Numerical Study of Flow Patterns and Air Entrapment Phenomena During the Filling of a Vertical Die Cavity,” ASME J. Manuf. Sci.Eng.,132(5)